ストリートカルチャーを追いかけ続けるBLANKMAGが豊橋・水上ビルにギャラリーをオープン
世界中のアーティストとコラボを展開するカルチャーレーベル
BLANKMAG
豊橋市・水上ビル
世界中のアーティストとコラボして雑誌やアパレルコレクションを発表したり、イベントを開催したりするなど、常に活動が注目されるカルチャーレーベル「ブランクマグ(BLANKMAG)」がこの秋、愛知県豊橋市にギャラリーをオープンした。12月27日まで開催している展示販売会では、「シュプリーム(Supreme)」とつながりの深い写真家アリ・マルコポロスと作った作品集や米国を代表する写真家のピーター・サザーランドの希少な書籍などが並ぶ。今回のイベントやストリートカルチャーに深く精通した人々を魅了する活動を続ける理由、豊橋市への思いなどをブランクマグから聞いた。
豊橋駅南側の通称水上ビルの一角。視線を2階へ向ければ、未完成に見える部屋からいくつものスケートボードが目に入る。サビ加工された重厚なドアを開けて階段を登ると、そこにブランクマグの世界が広がる。
ギャラリー中央に鎮座するのは、米国在住の写真家ピーター・サザーランドが手掛けるブランド「CNY」のアーカイブブックだ。本イベントの目玉の一つであるこの書籍は世界で200冊ほどしか流通していない希少なものという。
その脇には、25年ほどニューヨークのストリートカルチャーを追い続け、コレクターであるブランクマグ自身の膨大なコレクションの一部で、ピータさんのスケートボードや写真集、小冊子などがあり、現在では入手困難な書籍、さらにはアーカイブブックを手掛けた出版プロジェクトがこれまでに出した書籍も手に取ることができる。
アリ・マルコポロスとの夢のような作品集作り
ギャラリーをオープンしたのは今年10月。するとすぐに信じられないことが起こった。グッチやナイキ、アディダスなどの広告写真を撮影する写真家のアリ・マルコポロスとの作品集作りの好機が巡ってきたのだ。
きっかけは、アリさんのコレクションを独自の視点でセレクトしたイベント。告知のインスタグラムを見たアリさんが、オフィシャルとうたわない誠実さとディスプレイを気に入り、作品集作りを提案。「自分からいうと神様のような人。(作品集作りは)夢のまた夢のようなことで、これで活動を終えてもいいと思えた」と話す。
作品集には、アリさんらしい「人」や「スケーター」を被写体とせず、、静かな眼差しで切り取られた静謐な木々やストリートアートが施されたシャッターなどが並ぶ。そして、作品の特徴である刻印された日付は2020年。「世界がコロナ禍にいる中で、今のアリさんの行動や考えが一番表現されていたと思う。それを叶えていただけてうれしかった」という。
カルト的人気を誇るスピード感と純度の高い活動
形になるまでわずか1カ月という「スピード感」とその時のアリさんの思いをダイレクトに濃密なままに表現した「高い純度」、それこそがブランクマグの活動の根幹を支える部分と言える。本作の販売はわずか50冊。初回分は瞬く間に予約で埋まり、抽選になるほどの人気ぶりだったが、展示販売会では、その作品集も見ることができる。
ただ、こうした話題性のある活動は本業ではない。別の仕事を抱えながら、決して大きな利益にならないことに時間とコストをかける「理由は?」と聞くと、「多分自分のためです。アーティストは作品やデザインを作ることで内面を出すことができるが、自分はアーティストではないので、ため込んだものを何かの形で出したいんだと思う。それがある時は人であり、Tシャツ。今はこのスペースへの熱がある。こうして自然と人とのつながりができる。来場者の話を聞くことが楽しいですね」。 ブランクマグは素性を明かさず、実態は謎に包まれている。水路の上に建つ珍しいビル群、水上ビルの一室にギャラリーを設けた理由も、ニューヨークでアーティストをしている友人のアトリエに雰囲気が似ていたからという。だから、豊橋市という特定の場所の色がつくことも好まない。「豊橋を盛り上げようとは意識していない。ここが魅力的な場所になり、結果的に還元できるものがあればいいし、例えばここに来た人が触発されて、ずっとモヤモヤしていたことを表現してみようという人が増えれば、自然と街は活気づいてくると思う」。
テクノロジーの発展により、いつでも誰とでもつながれ、物理的な距離も近くなった。東京ではなく、この場所を目指して世界中の人が来る日も近いかもしれない。
イベント期間:2020年12月20日~12月27日
営業時間:午後1時~午後6時
場所:ブランクマグギャラリー(blankmag gallery)
住所:愛知県豊橋市駅前大通3丁目118村上ビル南階段2階