1. HOME
  2. 農業と食
  3. 畑へ行き農家からの新鮮な野菜を直接購入できる「さんち」が東三河で始動
農業と食

畑へ行き農家からの新鮮な野菜を直接購入できる「さんち」が東三河で始動

農業と食

 近くの農場へ直接足を運び、野菜が購入できる情報を集約するプラットフォーム「さんち」が、愛知県東部の東三河で本格的に始動した。農家から直接買えるので新鮮な上、流通に関わるコストもかからないため安く購入できるという。このプラットフォームがもたらすのは、これまで生産現場で発生していた農産物のロス削減や生産者と消費者のコミニケーションの創出だ。

スポンサーリンク

 

豊橋、田原の農場が参加

 昨年11月から試験的にスタートした「さんち」は現在、豊橋、田原両市の13農場が参画している。消費者は、農家側が掲載する商品と農場に来て良い時間帯、場所、価格、数量などの情報を見て、直接、農場を訪ねる。現在、仲介手数料もマッチング手数料も無料となっている。

 「さんち」は、豊橋市が日本一の生産量を誇るコチョウランを生産する「リーフ」(同市)のグループ会社で販売部門の「胡蝶蘭コマース」が手掛ける。これまで農家から直接取り寄せができる通販サイトを運営してきたが、送料や梱包などに関わるコストが課題となっていた。

物流コスト削減から生まれたアイデア

 「価格を安くするにはどうすればいいのか。一番の問題は物流コストでした。普段使う野菜が高くなると買いにくくなります。物流コストをカットするにはどうすればいいのかと考えたときに、農場へ消費者が買いに来たら送料だけでなく、資材費、梱包費、人件費もかからないという逆転のアイデアが生まれました。消費者は新鮮で安い商品が買えるし、農家さんは梱包も発送もしない、手間が省ける。『さんち』の着想はそこでした」と胡蝶蘭コマースの伴和樹さんは話す。

さんち

規格外品や過剰生産野菜を販売

 農家側は、通販や直売所に出品するための梱包と発送の準備に手間をかけずに売ることができる。農家が出品する商品は、市場に流通しているものだけでなく、「ジャム用のイチゴ」や「変形したミニトマト」などの規格外品、過剰生産された野菜、実験的に作ってみたものなど。

 「さんちは、『取りに来てくれるなら売ってもいいよ』という農家と『取りに行ってもでも買いたい』という消費者のプラットフォーム。なので何を売ってもらってもいい。市場に流通する物でも、今まで畑に捨てていた物でも、畑の土や肥料もありです。それぞれの農家さんは工夫して、商品のラインナップを考えながら出品しています」。
 さらに伴さんは続ける。「一つ、面白い現象があります。それは生産現場を見るとせっかくだからと、同じ種類の野菜でもたくさん買っていく。スーパーだとニンジンは1袋しか買わないけれど、農場に行けばかごいっぱい買って帰りたくなるようです」と言う。

さんち

 さんちの長所の一つがファンの共有だ。「それぞれの農家さんは、ちょっとずつお客さんを持っていると思います。それをさんちというプラットフォームで共有することで、各農家さんが抱えるファンがみんなで抱えられるファンになり、すごく大きな力を持ちます。自分がリーチできる人は30人だけだったけれど、さんちに出すと300人に見てもらえる。こういうプラットフォームは農業界ではなかったと思います」と話す。

さんちが目指すのは生産現場での食品ロス削減

 現在、社会が解決すべき課題の一つになっている食品ロスの解決にもアプローチする。生産現場で破棄されている量は正確には分からないものの、15~20%が捨てられているというデータもある。「ぼくら生産者の感覚でいってもそれくらいあります。これをフードロスと呼んでいいかわかりませんが、捨てているのにたくさん輸入していたり、捨てているのに人口が増えて食料をどうするかと考えていたりする。新鮮で食べられるのにもったいないと思うんです。規格外品を捨てるのを正義だと思っている人もたくさんいるし、正規品が安くなるんじゃないか、という意見もありますが、消費者は安くて、新鮮なものを食べたい、これは一つの価値だと思う。僕はそれに蓋をしているのではないかと思います」と伴さん。

農家と消費者のコミュニケーションの場に

 続けて、「参加する農家さんからは『さんちのいい点は説明できることだ』と言われました。B品を売るにしても、こういう傷がつくのはこういう作業をするから傷がつきやすいとか、『今の時期は甘いけど、2カ月後にはちょっと甘味が落ちるんだよね』と説明できる。そう言ってから買ってもらうと2カ月後でもがっかりしない。対面だと全部、理解して買ってもらえるのがとても嬉しいらしいです」と話す。消費者と農家、双方のコミュニケーションが生まれることで納得感が生まれる。

 さらに、マーケティングの場としての期待もある。例えば、試験的に作った作物を売れば、消費者の反応が手に取るように分かる。「今まで生産者は『うちのここを知ってほしい』と言える場がなかった。逆に消費者側は『こういうの作ってほしい』『こういうのが好きなの』と作り手に要望する場がない。さんちは、まさにそれが言える場で、そこが生産者と消費者の溝でした」。

 顔が見える関係性を築くことが、農家のさらなる研さんにつながる可能性も。「農家さんがファンの顔、名前を認識することが、作り手としてのプライドや実力を一番発揮するのではないでしょうか。そのきっかけ、入り口になるんじゃないかと思っています」。

さんち

東三河で地元農産物の美味しさ伝える

 今後、全国展開も視野に入れるが、まずは地元、東三河で地産地消のニーズに応える。「作り手や行政は東三河の野菜はおいしいと思っていたけれど、地元の野菜は東京へ運ばれてしまっていたので、それに気づいている消費者はあまりいませんでした。おいしさを知るきっかけにもなると思っています」と話す。

 さんちの情報はインスタ「farm_shopping_sanchi」でも発信している。

スポンサーリンク

休耕地ハッピープロジェクト