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農業と食

ゴ・エ・ミヨ3年連続掲載のaruが発信する東三河の農・食・文化

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 愛知県の豊橋駅近くにあるフレンチレストラン「aru(アル)」は、「ミシュランガイド」に並ぶレストランガイドと評される「ゴ・エ・ミヨ2023」に三河地域で唯一、掲載された店だ。オーナーシェフの鈴木琢さんが作り出す芸術的な料理は、畑に足を運び、農家との交流をもとに「東三河の旬」を表現。皿を通してこの地域の良さを伝えている。

 

 

 

三河で唯一のゴ・エ・ミヨ掲載店

 今年3月に発行された「ゴ・エ・ミヨ2023」は、新たに東北地域を含めた47都道府県から501軒が選ばれた。うち県内は、名古屋、豊橋、一宮、常滑の4市のレストラン19軒が掲載されている。料理人や食材、サービスだけでなく、地域性にも焦点を当て、20点満点で評価する。新進気鋭のシェフをいち早く見つけ出すことにも力を入れている。

 

 

東三河の旬を皿に表現

 3年連続で掲載されたaruのメニューは、野菜をメインにした1万3200円のおまかせコースのみ。生産者から直接仕入れた新鮮な野菜を、素材本来の味を生かした料理が並ぶ。農家を訪ね、どのような人が何を思い、どんな環境で農作物と日々向き合っているのか、コミニケーションが店の知性となっている。客は、地元だけでなく、名古屋や東京、大阪からわざわざ足を運ぶ。

 

 例えば、豊川市の生産者が育てたアスパラガスのスープ。一見、地味にも思えるこのスープに実はリピーターが絶えない。アスパラから出汁をとり、バターと塩だけで調理する。乳化させ白濁したスープにアスパラを入れて、鈴木さんが自ら家で育てるエディブルフラワーを香りの一つとして添える。「使うアスパラは太くて立派だけど、全然筋ばっていない。店頭で売っている味の抜けたアスパラしか食べたことない人は、その味に驚かれます」と鈴木さん。

 

 

 四季折々の野菜で作るスープからは野菜の力強さが感じられる。野菜の鮮度、味の濃さ、生命力、どれもが農家と物理的に近い産地ならではの強みだ。近郊の少量多品種生産の農家の力を借りて、一年中、あえて東三河に絞った食材で勝負している。

 

 

 あくまでメニューは東三河の旬に合わせる。サービスを担当する妻の彩さんは、「都会だとトマトやアスパラは年間通して集まってくるけれど、やはり地元の旬のものが一番味が濃い。鮮度ももちろんですけど、野菜そのものの味がすごくしっかり感じられる時期に調理してお出しできたら、他にはないここだけのものになるかなと思っています」。

 

 

オーナーシェフはSola出身

 aruのルーツには、本場パリでミシュラン一ツ星を獲得した「Sola」がある。鈴木さんは大学卒業後、地元のホテルに就職。飲食店開業を決意し、大阪でクラシックなフレンチについて学んだ。28歳で渡仏し、「Sola」のオーナーシェフ吉武広樹さんに師事。吉武さんの、クラシカルさとは真逆の自由な発想から生まれる華やかな料理に刺激を受けた。「素材の形で盛り付けを変えたり、考え方が柔軟で何でも試したりという感じで、面白かったですね。Solaでは週2回、地元のマルシェに通い、その日に手に入った食材でメニューを考えていたので、今のaruの形に近いです」と鈴木さん。帰国後は、宮城県仙台市のフレンチでスーシェフを経験。2017年末に地元へ戻り、豊橋駅近くに店を構えた。

 

東三河の文化を掘り下げ、伝える

 aruは新型コロナウイルス禍の中、再び県外の客が来ることを願い、東三河に根付いた文化をしっかり深掘りして、料理と合わせてこの街の匂いを伝える取り組みを始めた。文化と料理との共存について深く考え、咀嚼し、皿に落とし込む。地域を絞り、風土や歴史、文化を料理に表現するこうした取り組みは、ローカルガストロミーと呼ばれ、観光客を呼ぶ一つの重要な要素として日本各地で盛んに行われている。

 

 

 店で提供する器、メニューを覆う表紙の皮、室内を照らすキャンドル、客の手に馴染むリネン類、どれもが東三河に根付いたもの。彩さんは「もともと、東三河に根付くいいものを発信したいと思っていました。レストランで過ごした時間を通じて、自宅に帰った後も豊な気持ちになってもらえたらと思っています。器の作家さんを知り、購入し、家でもその器を使う。aruを通じて知り得たことで豊かになってくれたら嬉しいです。人とのつながりを大事にして、それをお客さんに還元していきたいと思っています」と話す。

 

 

 鈴木さんは「ゴエミヨで評価の高い店を見ると、もっともっと文化に根付いたことをやっている。地域の郷土料理をシェフのフィルターを通して料理にしていくとか、そういう発信がまだまだ弱いので、そこをもっと深掘りできるようにしていきたい。名古屋=愛知になっていますが、『こういう街があるよ』と東三河についても紹介していきたい。豊橋に目を向けていただくきっかけの一つになると思っています」。

 

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aru
愛知県豊橋市広小路2-28 吉田ビル 2F
close:日曜日、不定休
完全予約制
電話:0532・54・5518

 

 

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