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休耕地ハッピープロジェクト

休耕地をこれ以上増やさない、荒れた農地再生に消費者と挑む愛知県豊川市の農家

 膨大な量のプラスチックの鉢とこんもりと積まれたビニールシートは、この畑が花を育てていたことを物語る。ここのように担い手がおらず畑作を行なっていない農地は、農業地帯にとって頭を抱える問題の一つになっている。愛知県豊川市近郊で農地を蘇らせる活動に取り組む「休耕地ハッピープロジェクト」は今、15年間、農地として機能していなかったこの場所の再生を目指している。

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ビニールや鉢が散乱する畑

 県道からすぐの広さ5000平方㍍の農地には、借主だった花農家が突然の病で倒れたきり、ハウスがそのまま残されていた。農家自身がモノを捨てられない性格だったことで、ハウス内には大量のプラスチックの鉢とケースが散乱し、高齢の地主も手を付けられないまま時は過ぎていった。

 「10年、20年後、そこら中でこうした問題が起きると思う」と話すのは、プロジェクトの代表で豊川市の農家・酒井美代子さん(53)。

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 国内の耕地面積は年々減少する一方で、耕作放棄地は増加している。耕作放棄地とは「農地のうち、過去1年以上作物を栽培せず、この数年の間に再び耕作する意思のない土地」。1985年には全国で13・5万㌶しかなかったものが、2015年には42・3万㌶になり、3倍に増えた。プロジェクトの言う休耕地は耕作放棄地とおおむね同じで「現在、作物が作られておらず、この数年の間に耕作を再開する見込みがない土地」を指す。

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 酒井さんは、こうした作物の栽培を何らかの理由で行えなくなった畑を借りて長年農業を営む。その面積は現在、およそ11㌶。プロジェクトは、休耕地の現状を一般の消費者に知ってもらうため2020年に発足した。以来、休耕地だった畑で育てたトウモロコシやニンジンの収穫体験、ソバ作りなどを企画。メンバーは200人を超え、畑に触れ合いながら、農業の楽しさを体感している。また、休耕地を実験場所と位置づけ、ドローンを使った野菜の栽培管理も計画し、新たな農業の在り方も模索する。

 酒井さん自身、今回ほど、荒れ果てた畑の再生は初めてだったが、身近な畑も放っておくと荒れ、実際に復活させるには相当な労力が必要なことを知ってもらうためにあえて挑戦した。 

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 竹や草木も伸び放題のこの畑を復活させるため、昨年10月から、ゴミの撤去や木の伐採、ハウスを支えていた鉄パイプの掘り起こしなどを進め、今春までに農地として使えることを目指す。今後は、東三河地域で醸造業が盛んなことから、畑では大豆を作り、しょう油や味噌などを手がける地元の醸造メーカーと協力しながら販路拡大を目指す計画だ。 

 ただ、再生には、ごみの処理や樹木の伐採などに多額の費用がかかる。豊川市では、耕作放棄地の復旧にかかる費用の一部を助成しているが、それも十数万円ほど。ほとんどはプロジェクト持ちになる算段だ。「借りる方も高齢なら、貸す方も高齢なので、次の借り手を見つけるのもなかなか難しかったんだと思います。しかし、ここは場所も土壌もとてもいい畑なので、われわれでなんとか再生したい」と酒井さんは力を込める。

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 長く農地として使われていないと、草木が生い茂ることで、野生鳥獣の住処になって周辺農地が鳥獣被害を受けたり、病害虫の発生の原因になったりするなど、近隣の農地に迷惑をかけることになる。さらに、ごみを不法投棄される危険もあり、放置することは地域にとっても見過ごせない。長い間、作付けされない場合、土壌の荒廃や表土の流出など、再び農地として活用するのが難しくなるため、できるだけ早期の解決が重要となる。

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休耕地ハッピープロジェクト代表の酒井さん

 

 現在、農業の働き手の中心は60~80代。担い手不足にあえぐ業界には、複数人の農家で管理していた畑を1人で見る時代がすぐそこまで迫っている。休耕地増加の背景にある担い手不足など、農業を取り巻く問題の解決には、多くの市民が農業に関わる必要があると考える酒井さんは、「畑で遊びながら農業を知ってもらうことで、一緒に農業をする仲間をつくっていきたい」と話す。

 

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